結論:金額は1社も出ていない。比べるのは「見積りの変数」
デジタルアセット管理(DAM)は、本ページ掲載5サービスのすべてが料金を公開していません。本サイトで扱ってきたカテゴリの中で、公開率が0%になったのはこの分野だけです。
金額で比べられない以上、見積りに使われる変数で選ぶことになります。そしてその変数が各社で違います。
| 導入目的 | おすすめのタイプ | 主なサービス |
|---|---|---|
| 円建てで予算を固定したい | 掲載5社で唯一の国内サービス。日本語サポート・基本料金に1TB・無料トライアルあり | CIERTO(シエルト) |
| 素材を見るだけの社員が多い | 閲覧ユーザーが無制限。30年以上の歴史を持つDAMの老舗 | Canto |
| アカウントを広く配りたい | 月間アクティブユーザー課金。登録だけで使っていない人は数に入らない | Frontify |
| 必要な機能だけに絞りたい | ユーザー数・容量・製品・サポート・契約年数のモジュール型。155以上の連携 | Bynder |
| Microsoft環境で揃えたい | Microsoft Azure基盤で世界61データセンター。Microsoft製品と連携 | MediaValet |
自社で誰がどう使うのかを整理してから問い合わせてください。
デジタルアセット管理(DAM)とは
画像・動画・デザインデータといった制作物を一元管理し、社内外で共有・活用するための仕組みです。ファイルサーバーやクラウドストレージとの違いは、素材そのものに情報を紐づけて探せる状態にする点にあります。
撮影した写真が何万点もあるとき、フォルダ構成だけでは目的の1枚にたどり着けません。DAMは撮影日・被写体・使用許諾の期限・使用済みの媒体といった情報を素材に持たせ、条件で絞り込めるようにします。ブランドのガイドラインや承認フローを組み込むものもあります。
主な利用者は、制作物を多く抱えるメーカーや小売、広告・制作会社です。
選び方
1. 「何人で使うか」の数え方が3通りある
これが費用を最も左右します。掲載5サービスは次のように分かれます。
登録ユーザー数で数える
- Bynder:ユーザー数を見積りの変数に含む
- MediaValet:ユーザー数を見積りの変数に含む
実際に使った人数で数える
- Frontify:月間アクティブユーザー(MAU)課金。6か月の平均で算定
閲覧する人は数えない
- Canto:閲覧ユーザーが無制限
制作に関わる人は数名でも、社内で素材を見る人が数百人いる——という組織は珍しくありません。その場合、CantoとFrontifyでは総額の考え方が根本的に変わります。
Frontifyの方式は、アカウントを広く配っておいて実際に使う人が限られる状況で効きます。ただし繁忙期に一斉に使うような運用では、その月のアクティブユーザーが増えます(6か月平均のため単月の増減がそのまま反映されるわけではありません)。
2. 料金非公開が前提であることを織り込む
掲載5サービスは、いずれも公式サイトに金額の記載がありません。Cantoのようにプラン構成を公開しているサービスでも、金額そのものは問い合わせが前提です。
概算を並べて絞り込むという進め方が取れません。複数社を比較するなら、同じ条件(利用者数・ストレージ容量・必要な連携)を提示して見積りを取ることになります。検討のスケジュールに、その往復の時間を含めておく必要があります。
3. ユーザー数以外の変数を洗い出す
見積りの変数として公開されているものを並べると次のようになります。
- Bynder:ユーザー数/ストレージ/利用する製品/サポートレベル/契約年数
- MediaValet:ユーザー数/容量/機能/連携
- Canto:プラン/チーム規模/ストレージ
- CIERTO:導入形態/容量(基本料金に1TBを含む)
- Frontify:月間アクティブユーザー/機能
Bynderは変数が5つと最も多く、契約年数まで含まれます。変数が多いということは、必要な構成に絞れば費用を抑えられる余地があるということでもありますが、何を使うかが定まっていない段階では見積りの前提を作りにくくなります。
見積り依頼の前に、保管したいデータ量と必要な連携先を確認しておくと、条件を揃えた比較がしやすくなります。動画を多く扱う場合は静止画中心の場合より大きな容量が必要です。
4. 円建てか外貨建てか
掲載5サービスのうち円建てで提供されるのはCIERTOだけです。Bynder・Frontify・Canto・MediaValetはいずれもUSD建てで、契約後も為替の影響を受けます。
年間の予算を円で固定したい場合や、稟議で金額の変動を避けたい場合は、この違いが実務上の判断材料になります。
CIERTOは日本語サポートを提供し、Illustrator・Photoshop・InDesignといったAdobeの入稿データのプレビューに対応します。印刷物の制作を含む業務で扱うファイルをそのまま確認できます。
5. 既存のツールとどうつながるか
掲載5サービスはいずれもAdobe Creative Cloudと連携しますが、その先が異なります。
- Bynder:155以上の連携をマーケットプレイスで提供(CMS・PIM・EC等)
- Frontify:FigmaやSketchなどデザインツールとの統合
- MediaValet:Microsoft Azure基盤でMicrosoft製品と連携
- Canto:CMSやコラボレーションツールとの基本連携は標準価格に含む
- CIERTO:Adobe入稿データのプレビューに対応
すでに使っているツールが決まっているなら、そこから逆算して候補を絞れます。なおCantoは連携ごとに追加費用が発生しないことを明記しています。
6. 試せるかどうか
無料プランは掲載5サービスのいずれにもありません。
無料トライアルの申込フォームを公式に常設しているのはCIERTOのみで、日数の明記はありません。Bynder・Frontify・Canto・MediaValetはデモの予約や見積り相談から始まります。
実際に自社の素材を入れて使い勝手を確かめてから決める、という進め方が取りにくい分野です。
タイプ別に見る
唯一の国内サービス。円建て・日本語サポート・Adobe入稿データのプレビューに対応
閲覧ユーザー無制限。プランは4段階で基本連携は標準価格に含む
月間アクティブユーザーを6か月平均で算定。使わない人は数に入らない
変数5つのモジュール型。世界4,000ブランド超・170万ユーザーが利用
Azure基盤で世界61データセンター。DAM専業で7万ユーザー超が利用
本ページ独自のまとめ
掲載5サービスを調べたうえで、問い合わせ前に押さえておきたい点を挙げます。
料金公開率は0%です。本サイトで扱ってきたカテゴリの中で、掲載社すべてが金額を公開していないのはこの分野だけでした。DAMは利用者数・容量・連携の組み合わせで構成が大きく変わるため、一律の金額を示しにくい性質があると考えられます。
「ユーザー数」という言葉の意味が各社で違います。Bynderの言うユーザー数、Frontifyの言う月間アクティブユーザー、Cantoが数えない閲覧ユーザーは、それぞれ別のものを指しています。見積りを比べるときは、各社が何を数えているかを揃えて確認する必要があります。
変数の多さは、絞り込める余地の大きさでもあります。Bynderのように5つの変数を組み合わせる方式は、要件が固まっていれば無駄を削れます。逆に何を使うか決まっていない段階では、変数が少ないほうが見積りを取りやすくなります。
試用できるのは1サービスだけです。無料プランはなく、無料トライアルの導線があるのもCIERTOのみです。導入判断は提案内容とデモ、他社事例に依ることになるため、デモの段階で自社の素材を使った確認ができるかを聞いておく価値があります。
@card 掲載5サービスの料金公開状況|料金を公開:0サービス(0%)/全5サービスが個社見積り/円建てで提供:1サービス(CIERTO)/無料プランあり:0サービス/無料トライアルの導線あり:1サービス(20%・CIERTO)
各サービスの詳細
株式会社ビジュアル・プロセッシング・ジャパンが提供するデジタルアセット管理システムです。同社は1994年1月6日設立、資本金207,277千円、従業員92名(2026年4月時点・役員および派遣社員含む)で、東京都渋谷区恵比寿の恵比寿ガーデンプレイスセンタープラザに本社を置き、東証グロース市場に上場しています(証券コード334A・2025年3月25日新規上場、公募価格1,430円/初値3,040円、主幹事は岡三証券)。
掲載5社の中で唯一の国内サービスです。料金は個社見積りで公式サイトに金額の記載はありませんが、円建てで提供される点が他の4社と異なります。USD建てのサービスでは契約後も為替の影響を受けますが、円建てであれば年間の予算を固定できます。基本料金には1TBのストレージが含まれます。
用途に合わせて複数の導入形態が用意されており、導入形態と容量によって金額が決まります。日本語でのサポートに対応し、NTTコム オンライン経由の提供チャネルもあります。
Illustrator・Photoshop・InDesignといったAdobeの入稿データのプレビューに対応しており、印刷物の制作を含む業務で扱うファイルをそのまま確認できます。
公式トップに無料トライアルの申込フォームが常設されており、掲載5社の中で試用の導線が用意されているのは本サービスです(日数の明記はありません)。金額が非公開の領域では、試せること自体が判断材料になります。
Bynder B.V.が提供するデジタルアセット管理システムです。オランダ・アムステルダムに本社を置き、ボストン/ロンドン/バルセロナ/ドバイ/メルボルンなどグローバル8拠点、従業員600名以上の非上場企業です(2022年12月に米PEのThomas H. Lee PartnersがInsight Partnersから過半数株式・約58%を取得)。
世界4,000ブランド超で利用され、170万ユーザー・1億7,500万を超えるアセットが管理されています。Fortune 500の約20%が利用しているとされています。
料金はモジュール型のカスタム見積りで、ユーザー数・ストレージ容量・利用する製品・サポートレベル・契約年数を組み合わせて決まります。掲載5社の中で見積りの変数が最も多く示されているサービスです。USD建てで、金額は公式サイトに記載がありません。
変数が多いということは、自社に必要な構成を絞り込めば費用を抑えられる余地があるということでもあります。逆に何を使うかが定まっていない段階では、見積りの前提を作りにくくなります。契約年数も変数に含まれるため、複数年契約での条件を確認する価値があります。
連携の幅が広く、Adobe Creative Cloudをはじめ各種CMSやPIM、ECなど155以上の連携をマーケットプレイスで提供しています。サポートレベルは契約内容として選択する形です。無料トライアルの記載はなく、デモ予約・見積り相談からの検討となります。
Frontify AGが提供するブランド管理・デジタルアセット管理のプラットフォームです。2013年設立、スイス・ザンクトガレンに本社を置き、ニューヨーク/ロンドン/フランクフルトに拠点を持つ企業です(累計調達額は約5,000万ドル)。従業員は201〜500名規模です。
課金の考え方が他と異なります。月間アクティブユーザー(MAU)による課金で、6か月の平均で算定されます。 つまり登録しているだけで実際には使っていない人は数に入りません。アカウントを配っておいて実際に使う人が限られるという状況では、登録ユーザー数で課金される方式より費用を抑えられます。
逆に、繁忙期に多くの人が一斉に使うような運用では、その月のアクティブユーザーが増えることになります。6か月の平均で算定されるため単月の増減がそのまま反映されるわけではありませんが、利用の波を把握しておく必要があります。
デザインとの連携に強く、Adobe Creative CloudのほかFigmaやSketchといったデザインツール、各種CMSと連携します。掲載5社の中でFigmaやSketchまで挙げているのは本サービスです。
Lufthansa・IBM・Vodafone・Mercedes-Benzといった大手ブランドが導入しています。複数地域・複数ブランドのブランド運用を想定した構成で、料金はUSD建ての個社見積りです。無料トライアルの記載はありません。
Canto, Inc.が提供するデジタルアセット管理システムです。1990年設立で30年以上にわたって提供されているDAMの老舗です。米サンフランシスコに本社を置き、ドイツのベルリンとギーセンにも拠点があります。従業員は約200名規模、導入は2,500社超とされています(いずれも第三者情報)。
特徴は閲覧ユーザーが無制限である点です。 素材を見るだけの人が何人いても金額に影響しません。制作に関わる人は数名でも、社内で素材を参照する人が数百人いるという組織では、この条件が総額を大きく左右します。
プランは4つに分かれます。基本的なDAMのCore Essentials、ワークフローとコラボレーションを強化したEnhanced Collaboration、商品アセット向けのOmni Brand Solution、高度なカスタマイズと専任サポートを含むAdvancedです。金額はいずれも非公開で、プラン・チーム規模・ストレージによる個社見積りとなります。
商品アセット向けのプランがある点は、EC事業者やメーカーにとって候補を絞る材料になります。
Adobe Creative Cloudなどのクリエイティブツールや各種CMS・コラボレーションツールとの基本連携は標準価格に含まれると明記されています。連携ごとに追加費用が発生する構成ではないため、総額が見えやすくなります。無料トライアルの記載はありません。
MediaValet Inc.が提供するデジタルアセット管理システムです。1993年設立(旧VRX Worldwide、後にMediaValetへ社名変更)で、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバーに本社を置きます。2024年1月25日にSTGパートナーズ系による全額現金買収(約8,000万ドル・1株1.71ドル)が発表され、同年4月2日に完了してTSXから上場廃止・非公開化されています。
基盤にMicrosoft Azureを採用しており、世界61のデータセンターを通じて提供されます。すでにMicrosoftの環境を使っている組織では、Microsoft製品との連携が導入時の判断材料になります。Adobe Creative Cloudや各種CMSとの連携にも対応します。
DAMを専業とするサービス(Pure-Play DAM)である点も特徴です。他の業務機能と抱き合わせにならないため、アセット管理そのものの要件で選べます。
料金はユーザー数・ストレージ容量・機能・連携に応じたカスタム見積りで、USD建てです。公式サイトに金額の記載はありません。
7万を超えるユーザーが利用しており、95%が1年未満でROIを達成したとしています。エンタープライズ向けのサポート体制が提供されます。無料トライアルの記載はなく、デモ予約・見積り依頼からの検討となります。
よくある質問
料金の目安はどれくらいですか。
掲載5サービスは、いずれも公式サイトに金額の記載がありません。すべて個社見積りとなるため、目安を示すことができません。複数社を比較する場合は、利用者数・ストレージ容量・必要な連携といった条件を揃えて見積りを依頼することになります。
閲覧するだけの社員が多い場合はどれが向いていますか。
Cantoは閲覧ユーザーが無制限で、見るだけの人が何人いても金額に影響しません。Frontifyは月間アクティブユーザー(MAU)による課金で6か月の平均で算定されるため、実際に使った人だけが数に入ります。BynderとMediaValetはユーザー数を見積りの変数に含めます。
無料で試すことはできますか。
掲載5サービスに無料プランはありません。無料トライアルの申込フォームを公式に常設しているのはCIERTOのみで、日数の明記はありません。Bynder・Frontify・Canto・MediaValetはデモの予約や見積り相談から始まります。
日本語で使えるサービスはどれですか。
CIERTOは株式会社ビジュアル・プロセッシング・ジャパンが提供する国内サービスで、日本語サポートに対応します。料金も円建てです。Illustrator・Photoshop・InDesignといったAdobeの入稿データのプレビューにも対応しており、国内の制作会社や事業会社での利用を想定しています。
ストレージの容量はどれくらい必要ですか。
扱う素材の種類によって変わります。CIERTOは基本料金に1TBのストレージが含まれます。Bynder・Canto・MediaValetはストレージ容量を見積りの変数に含めているため、事前に保管したいデータ量を把握しておく必要があります。動画を多く扱う場合は静止画中心の場合より大きな容量が必要になります。
デザインツールとの連携はできますか。
掲載5サービスはいずれもAdobe Creative Cloudと連携します。FrontifyはFigmaやSketchといったデザインツールとの統合も掲げています。Bynderは155以上の連携をマーケットプレイスで提供し、MediaValetはMicrosoft Azureを基盤としてMicrosoft製品との連携に対応します。Cantoは基本連携が標準価格に含まれると明記しています。
クラウドストレージとの違いは何ですか。
ファイルを保管するだけでなく、素材に情報を紐づけて探せる状態にする点が異なります。撮影日や被写体、使用許諾の期限、使用済みの媒体といった情報を持たせることで、条件を指定して目的の素材にたどり着けます。ブランドのガイドラインや承認フローを組み込めるサービスもあります。